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 医療被ばく 【妊娠と放射線について】

 皆さんは、「放射線」と聞くとどのよう様なイメージをお持ちですか?放射線は危険なもの・怖いものと感じられる方も多いかと思います。 そして放射線による診療(エックス線写真、CTなど)を受けられるとき、「被ばくはどれくらい?」「何回も撮って大丈夫なの?」と 心配になったり不安に思われたことがあるのではないでしょうか?目に見えない放射線のことなので、それがどれくらいの量のものなのか、 そして危険を伴うものなのか、わかりませんよね?そこで今回は医療ばく、中でも妊娠と放射線についてお話したいと思います。


 エックス線検査や放射線治療など、放射線を使った医療を受ける患者さんの被ばくのことを医療ばくといいます。 そしてこれには集団検診による被ばくも含まれます。


 妊娠に気付かずに胸部写真を撮影したり、胃透視を行なったりしておなかの胎児に影響はないか、また、妊娠はしていなくても被ばくによって 子供ができなくなったりしないだろうかという心配を抱かれる女性も少なくないでしょう。


 妊娠中に放射線診断により被ばくを受けた場合、腹部に大量の放射線を受けない限り胎児への影響を心配する必要はありません。 胎児に何らかの影響がおこる可能性があるのは100 mGy以上の放射線を受けた場合(表1)です。 この、何らかの影響が起こるか起こらないかの境の値のことを、しきい線量といいます。

母子イラスト
影響しきい線量(mGy)
流産(受精〜15日)100
形態異常(受精後2〜8週)100
精神発達遅延(受精後8〜15週)100〜200

表1 胎児の確定的影響の急性被ばくによるしきい線量(ICRP Pub.60より)

 胸部写真や腹部写真など、通常のエックス線検査では胎児の被ばく線量は、 しきい線量に比べ問題とならないぐらい少ないので、奇形などの発生する可能性はほとんどありません。

検査項目平均的被ばく線量(mGy)
胸部単純撮影0.01未満
腹部単純撮影1.4
腰椎単純撮影1.7
骨盤単純撮影1.1
胃透視1.1
注腸造影6.8
頭部CT0.005未満
胸部CT0.06
腹部CT8.0
骨盤CT25
腰椎CT2.4

表2 妊娠中における主なエックス線検査時の胎児被ばく線量(ICRP Pub.84より)

 また、放射線被ばくによって不妊になるかというと、こちらも通常のエックス線検査では問題となりません。 少しでも被ばくしたら不妊になる可能性があるのではなく、一定の線量以上被ばくしないと不妊にはならないのです。 一時不妊となるのは男性で150mGy以上、女性では650mGy以上の放射線を生殖腺が受けた場合 (表3) です。 生殖腺以外の身体を被ばくしても不妊にはなりません。

しきい線量(mGy)
男性女性
一時不妊 150650
永久不妊 3500〜60002500〜6000

表3 生殖腺の確定的影響の急性被ばくによるしきい線量(ICRP Pub.60 およびPub.41より)

 通常のエックス線検査では男性、女性ともに、生殖腺が上記の線量を被ばくすることはありませんから、 生殖腺が直接被ばくしたとしても不妊になることはありません。


 ちなみに、私たちは日常生活しているだけでも放射線を浴びています。この放射線を自然放射線といい、宇宙から、大地から、空気中から、 そして食物からも放射線を受けています。これら自然放射線での被ばく線量は平均で1人当たり年間2.4mSvです。 そして胸部単純撮影での被ばく線量は約0.06mSvで、これは東京〜ニューヨーク間を飛行機で往復した時に受ける放射線の量の半分以下です。 医療被ばくの場合mGy =mSvとして考えられますので、エックス線検査での被ばく線量がどのくらいのものなのか、 危険な量ではないことがお分かりいただけましたでしょうか?

医師・患者イラスト

 以上のことより、通常のエックス線検査において妊娠に関する放射線被ばくによる影響はほとんどありませんので、 安心して放射線診療をお受けください。しかし、妊娠していることがあらかじめ分かっている場合や不安な場合には必ず医師にご相談になり、 より安全に安心な放射線診療をお受けください。


 最後に、私たち放射線技師は患者さんの被ばくを減らすよう努めておりますが、医療被ばくや検査について不安な事、 不都合な事などがございましたら、お気軽に声をおかけください。

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