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チーム医療

静脈血栓塞栓症対策委員会

静脈血栓塞栓症(世間一般ではエコノミークラス症候群、旅行者血栓症と呼ばれています)とは、足や体幹の深い静脈に血の塊(血栓)が形成された状態で、 足の静脈に血栓ができた状態を深部静脈血栓症といいます。さらにこの血栓が流されて肺の血管を詰まらせた状態を肺血栓塞栓症といい、 時に生命を脅かす危険性があります。

チームの特色

入院中はご自宅での生活に比べて、治療のためベッド上で過ごすことが多くなる他、活動が制限されるため、 深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症を引き起こしやすい環境になります。そこで、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、臨床工学技士、事務など 多くの専門スタッフが集結し「静脈血栓塞栓症対策委員会」が設けられました。 本委員会では内科/外科など診療科を問わず全ての入院患者さんの静脈血栓塞栓症予防に努めるため、 血栓塞栓症予防マニュアルの作成や知識の普及/啓蒙活動を積極的に行い、より安心、安全な入院生活を送っていただけるよう努力しています。

トピックス

「手術室での取組み」手術看護認定看護師 越塚奈美

手術を受ける患者さんは、「静脈血栓症」になりやすいといわれています。
手術中は、長い間ベッドに横たわり同じ体勢をとり続けること、手術の影響で止血機能が亢進することから、足の深部の静脈内に血の塊(血栓)が発生し、 血液の流れ(血流)を妨げて静脈血栓症が発生しやすくなります。中でも「深部静脈血栓症」が原因でおこる「肺血栓塞栓症」は 静脈血栓症が引き起こすもっとも危険な病気です。足にできた血栓が血流にのって肺にたどり着くと「肺血栓塞栓症」がおこります。 これを防止するために、砺波総合病院では手術患者さんに対して、静脈血栓症を予防するとりくみを行っています。

どうして静脈に血栓ができるの???

「静脈のうっ滞」「血管内皮の損傷」「凝固能の亢進」が関与しています。

  • 手術中に動けないこと、手術操作による静脈の圧迫、術後の安静で血流が滞る。
  • 手術中の血管操作によって血管内皮が損傷すると血液が固まりやすくなる。
    手術を受ける患者さん全てに静脈血栓ができる可能性があるということです。


悪性疾患の手術・腹腔鏡を使う手術・砕石位(さいせきい)で行う手術
整形外科の手術・下肢に麻痺がある患者さん・妊婦さんなどは更に注意が必要です!

手術や疾患によって危険度は違うの???

日本血栓止血学会などによって作成された「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドライン」では、 静脈血栓塞栓症の負荷的な危険因子の強度、各手術における深部静脈塞栓症のリスクと推奨される予防法について以下のように示しています。

静脈血栓症のリスク

外科・泌尿器科 婦人科 産科 整形外科 脳外科
低リスク 60未満の非大手術 30分以内の小手術 正常分娩 上肢の手術 開頭術以外の手術
中リスク 60歳以上、あるいは危険因子のある非大手術
40歳以上、あるいは危険因子のある大手術
良性疾患手術
悪性疾患で良性疾患に準ずる手術
ホルモン治療中の患者に対する手術
帝王切開術 脊椎手術
骨盤・下肢手術
(股関節全置換術
 膝関節全置換術
 股関節骨折手術
 は除く)
脳腫瘍以外の開頭手術
高リスク 40歳以上のがんの大手術 骨盤内悪性腫瘍
静脈血栓の既往あるいは血栓性素因のある良性疾患
高齢肥満妊婦の帝王切開術 静脈血栓症の既往あるいは血栓性素因のある経膣分娩 股関節全置換術
膝関節全置換術
股関節骨折手術
脳腫瘍の開頭手術
最高リスク 静脈血栓塞栓症の既往あるいは血栓性素因のある大手術 静脈血栓塞栓症の既往あるいは血栓性素因のある大手術 静脈血栓塞栓症の既往あるいは血栓性素因のある帝王切開術 高リスクの手術を受ける患者に、静脈血栓塞栓症の既往、血栓性素因が存在する場合 静脈血栓塞栓症の既往あるいは血栓性素因のある脳腫瘍の開頭手術

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外科手術における大手術とは、全ての腹部手術あるいはその他の45分以上要する手術を基本とし、 また泌尿器科手術における大手術とは①全ての腹部・骨盤部の手術、②45分以上の腹部以外(陰嚢、経尿道的手術を含む)の手術を基準として、 麻酔法・出血量・輸血量・手術時間などを参考として総合的に評価する。

日本血栓止血学会 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症予防ガイドラインより

予防方法は???

患者さんの状態や疾患、術式・手術体位に合わせて静脈血栓症を予防しています。

《推奨される各リスクレベルの予防法》

リスクレベル 推奨予防法
低レベル 早期離床および積極的な運動
中レベル 弾性ストッキングあるいは間欠的空気圧迫法
高リスク 間欠的空気圧迫法あるいは抗凝固薬
最高リスク 抗凝固薬と間欠的空気圧迫法の併用あるいは抗凝固薬と弾性ストッキングの併用

日本血栓止血学会 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症予防ガイドラインより

《早期離床と積極的な運動》

  • 早期離床・・・歩行によって下腿の筋肉ポンプ作用がはたらき、下肢の静脈うっ滞を減少
  • 積極的運動・・早期離床ができない場合は、足関節底屈運動を行い下腿ポンプ作用を促進

《弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法》

《薬物的予防法》

必要時には、医師によって抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)が処方される。
未分画ヘパリン・用量調節ワルファリン・フォンダパリヌクス・エノキサパリン

肺血栓塞栓症が起きてしまったら???

予防していたにも関わらず、「肺血栓塞栓症」を発生してしまった場合には速やかに対応できるように、委員会での情報共有や手術室内での勉強会を行っています。 「肺血栓塞栓症」「深部静脈血栓症」を確実に予防できる様、スタッフの意識と知識の向上を図っています。

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